ル・マン24時間 TOYOTAの勢いはそのままで優勝しそうだが、昨年の悪夢があるからきっと優勝する。
アカプリ子が一生懸命TOYOTAを応援するに至った昨年のル・マン24時間耐久レース。
あまりに悲劇的なレース。
残り3分で止まった。マシン。NETTVで生で見た。
あまりにもTOYOTAのチームにとって残酷だった。
今年はあの時があるからキット雪辱を果たすと想う頑張れ!TOYOTA。TOYOTAGAZOO Racingチーム。
TOYOTAGAZOO Racingのサイトでは特集しています。今年はWECでも勝ってるしWRCITALYでも大活躍したしね。
この勢いもあるけど何より昨年の残り3分の悔しさがあるからそれをバネに勝ってくれると想う。これを読むと昨年は急場しのぎというか、まだ熟成されて無いマシンだったのですよね。
今年は大丈夫なような気がします。
是非読んで下さい。
負け嫌いの挑戦
第1話「本当の負けを知った2016年」
90年以上の歴史と伝統を持つル・マン24時間レース。
2016年のル・マンは、その歴史の中でも類を見ない衝撃的な結末となった。
残り3分、TOYOTA GAZOO Racingは奈落の底に突き落とされた。
2017年のル・マン24時間レースを前に、“その結末”を振り返るとともに、関係者の言葉を元に2年前のル・マンから続く物語を今、振り返る。
2016年6月19日、現地時間14時57分。
長いレースが終わろうとしていた。
あと3分で、トップを走るTOYOTA GAZOO Racingのクルマに、栄光のチェッカーフラッグが振り下ろされる・・・。そこにいた誰もがそう確信していた。
世界三大レースのひとつとされるル・マン24時間レース。
毎年6月、フランス西部の都市“ル・マン”で開催される、90年以上の歴史と伝統を持つレースだ。
トヨタは、ハイブリッド車での参戦が可能になった2012年にル・マンに復帰。
今日まで挑戦を続けている。
ル・マン24時間レースは、その名の通り24時間でもっとも多くの周回を走り切ったクルマに栄冠がもたらされる。
しかし、ル・マンで戦う人々・・・特にエンジニアやメカニックたちにとってル・マンは“24時間”ではない。彼らは、スタート前の準備から現場に立ち会い、中には40時間以上も睡眠をとらない者もいるのだ。
クルマを開発し、レースを指揮してきたGR開発部、部長の村田久武もその一人だった。
前年からの苦労が、あと数分ですべて報われる・・・だがレースを知る村田は気を抜いてはいなかった。
「過去、残り30分、1時間でトラブルが出たのも知っているし、見てきましたから、ずっとまだ何かあるかもしれないと思っていました」
それでもレース終了まであと2周となった段階で、さすがに今回は勝てるだろうと村田はサポートトレーラーを出てピットへと向かった。チーム全員で喜びを分かち合うために。
ところがそのとき、トップを走るTS050 HYBRIDのハンドルを握っていた日本人ドライバー 中嶋一貴が無線で叫んだ。
「ノーパワー!」
勝利を確信していたTOYOTA GAZOO Racingの関係者のみならず、レースを眺めていた大勢の観客やル・マンを長年取材してきたベテランジャーナリストですら、残酷な運命にただ呆然とするしかなかった。
振り返れば2016年のル・マンは、その1年前から始まっていた。
前年のル・マン24時間レース。
勝利を目指して臨んだものの、結果はトップから8周遅れの6位。
優勝はおろか表彰台にすら上ることができない惨敗だった。
「このままでは来年(2016年)も勝てない。」
村田は2年間かけて開発する予定だった新しいハイブリッドパワートレーンを、1年前倒しして2016年に投入することを決めた。
1年前倒し。
言葉にするのは簡単だが、たった1年で複雑きわまるハイブリッドレーシングカーをゼロから作り直す。それはあまりにも常識外れのプロジェクトであった。
2015年6月。
ル・マンのエンジンやハイブリッドシステムの開発が行われている東富士研究所では、ル・マンの後すぐに死にものぐるいの開発が始まった。
プロジェクトに関わる者、皆が「何が何でもやり遂げる」という覚悟を持っていた。
約4ヶ月後の2015年10月。
影も形もなかったエンジンやハイブリッドシステムは、図面を作りながら部品を発注するという突貫作業の結果、ベンチテストができる状態まで組み上がった。
だがクルマはエンジンやハイブリッドシステムだけで走るものではない。
年が明け、2016年シーズンに向けた本格的な走行テストが始まっても新車TS050 HYBRIDはなかなか形にならなかった。
そのため、走行テストは旧型のクルマに新しいエンジンやハイブリッドシステムを組み合わせた暫定仕様で行われることもあった。
ようやく2台の新車TS050 HYBRIDが組み上がって走れるようになったのは、開幕戦シルバーストーンになってから。2016年4月のことだった。
実戦デビューしたTS050 HYBRIDは、開幕戦シルバーストーンでは2位に入賞したものの熟成不足が目立った。
第2戦スパ・フランコルシャンでは、トップを独走しながら思いがけないトラブルが発生。ル・マン直前のレースで結果を残すことができなかった。
そしてTOYOTA GAZOO Racingはル・マン24時間レースを迎えるのである。
トヨタは30年以上、ル・マン24時間レースに挑戦している。
しかし優勝はまだ1度もない。
2016年のル・マン直前、あえて「敗者のままでいいのか」と自らに問いかけた。
もちろんそれで良いわけがない。
TOYOTA GAZOO Racingに関わる誰もがそう思っていた。
今年こそ勝者になるため、新車TS050 HYBRIDとともに伝統のレースに臨んだ。
そしてレース終了まで残り7分の時点で、2番手のポルシェに1分30秒近い差をつけ、念願の優勝にあと少しというところまでたどり着いたのだった。
しかし、あと3分というところで事態は一転。
TOYOTA GAZOO Racingは奈落の底に突き落とされた。
ピットの中では泣き出すものもおり、沈痛な状況となった。
GR開発部の部長を務める村田も、呆然とその状況を眺め、語り尽くせぬ悔しさに包まれていた1人だった。
「たとえ24時間レースの99%を支配したとしても、トップでフィニッシュできなかったのであれば負けは負けなんです」
悲しみに沈む村田たちの元に、日本から一通のメールが届いた。
メールの差出人は、社長の豊田章男だった。
スケジュールが合わず現地に行くことはできなかったが、豊田は日本からTOYOTA GAZOO Racingの挑戦をずっと見守っていたのだ。
豊田からのメールには、メディア向けに発表されるメッセージとともに、村田たちチームメンバーへの労わりの言葉が記されていた。
「その場にいてやれなくてごめん」
そして以下が「この悔しさはマシンを開発してる人だけでも、チームメンバーだけでもなく、トヨタに関わる全ての人の悔しさだ。この悔しさを、いかにこの後に繋げていくかだ。そういう想いを伝えたい」と、豊田がメディア向けに発表したメッセージの全文である。
ル・マン24時間耐久レースに、ご声援を送っていただいた皆様に心より感謝申しあげます。本当にありがとうございました。TOYOTA GAZOO Racingは、「敗者のままでいいのか」と、あえて自分達にプレッシャーをかけ、今までの悔しさを跳ね除ける戦いを続けてまいりました。メカニック、エンジニア、ドライバー、そしてサプライヤーの皆さま…戦いに携わる全ての者が、力を尽くし、改善を重ね、「もっといいクルマ」となって戻ってこられたのが、本年のル・マンであったと思います。
ついに悲願達成か…と、誰もが、その一瞬を見守る中、目の前に広がったのは、信じがたい光景でした。トヨタのクルマも、速く、そして強くなりました。しかし、ポルシェは、もっと速く、そして強かった…。決勝の24時間…、そして予選なども含め合計で30時間以上となるル・マンの道を、誰よりも速く、強く走り続けるということは、本当に厳しいことでした。チームの皆の心境を思うと…、そして、応援いただいた全ての方々へ…、今、なんと申しあげたらよいか、正直、言葉が見つかりません。
我々、TOYOTA GAZOO Racingは“負け嫌い”です。負けることを知らずに戦うのでなく、本当の“負け”を味あわさせてもらった我々は、来年もまた、世界耐久選手権という戦いに…、そして、この“ル・マン24時間”という戦いに戻ってまいります。もっといいクルマづくりのために…、そのためにル・マンの道に必ずや帰ってまいります。ポルシェ、アウディをはじめ、ル・マンの道で戦った全てのクルマとドライバーの皆さまに感謝すると共に、また、一年後、生まれ変わった我々を、再び全力で受け止めていただければと思います。
皆さま、“負け嫌い”のトヨタを待っていてください。よろしくお願いいたします。
企業のトップからのメッセージは、優勝など好成績を上げたときに発表されることが多い。負けたレースについて、トップ自らメッセージを出すことはまれなことである。
村田を始め、このメッセージを読んだTOYOTA GAZOO Racingのメンバーたちは救われる思いだった。
「敗者のままでいいのか」と自らに問いかけたTOYOTA GAZOO Racingは、本当の意味での負けを味わって2016年のル・マン24時間レースを終えることとなった。
「まだ何かが足りない」。
その答えを証明するために、TOYOTA GAZOO Racing は2017年、もう一度ル・マン24時間レースに挑む。
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